本書は、レバレッジシリーズで有名な本田直之氏の最新刊です。
この本は、変化と競争の激しい現代社会で生き抜いていく、サバイバルしていくための非常に有益な書だと思います。
冒頭で、氏は、「私は不況が好き」「ピンチこそチャンス」といわれています。
それは、自身の実体験から、切羽詰った体験、逆境のときに、一番自分が成長したし、スキルが磨かれたからだと言われています。
人間誰しも、辛いこと、苦しいことはいやなもので、できれば避けたいのが人情ですが、やはり人間、強くなる為には、いつまでもぬるま湯に使っていてはだめだと思います。
本田氏は、そうした逆境こそ、成長する機会と捉え、まさに今のような乱気流の時代こそチャンスの時代であると言われます。
また、氏は経営学者・ピーター・F・ドラッカー氏の書をかなり読まれているようです。
ドラッカー氏は私も大変尊敬する人物の一人ですが、著書のなかで、これからはパラレルキャリアを持つことが重要だと言われています。
本田氏は、その考え方に影響を受けているようで、同書の中で「マルチキャリア」として具体的に展開しています。
マルチキャリアというのは、副業したり、起業することと同義ではなく、また必ずしも即収入に結びつくものではないといいます。
たとえば、会社員として働きながら、趣味で何らかの分野の勉強をし続ける。それを書き溜めていっていずれ本として出版する。
これもりっぱなマルチキャリアだと言います。
マルチキャリアを持つと、コーポレートキャリアとしての会社員としての仕事も余裕が持て、相乗効果を得られると言います。
つまり、会社に依存する働き方ではなく、スキル提供型になり、万が一辞めざるを得ない状況になれば、もう一方のキャリアを中心に据える。
そうした複線型の発想は、現代の予測困難な時代においては、非常に有効な考え方ではないでしょうか。
私はドラッカー氏の著書を以前から読んでいたため、本田氏のこの発想はとくに新鮮には感じませんが、しかし大事なのは、実践です。
ドラッカーといった偉大な思想をただ読んでおしまい、というのでは真に自分の智慧にはなっていません。
それを自分のライフスタイルに落とし込んでこそ、初めて智慧となったと言えると思います。
今も、派遣切りで職を失う人が多くいるようですし、気の毒な人も多いと思います。
しかし、自業自得の側面もあると思います。私自身、派遣で働いていたこともありますが、いつ打ち切られてもいいように貯金はしていましたから、貯金を切り崩して生活をしていたことはありますが、路頭に迷うといった最悪の事態は避けることができました。
派遣という労働形態自体、はじめから不安定・不確実な要素が多いことははじめから分かっている以上、貯金をするなり副業をするなり何らかの対策を講じておくべきでしょう。
私も派遣という雇用形態に賛成ではありません。法改正が必要とも思っています。
しかし、結局は、自分の身は自分で守るしかないと思います。
要は、外部要因思考か内部要因思考かの違いだと思います。
外部要因思考とは、問題の原因をつねに自分ではなく他に求める考え方で、内部要因思考とは、その反対で常に自分の内に問題の原因を求める考え方です。
辛いとき、責任を他に転嫁するのは人情ではありますが、長期的視野に立てば、それでは何も問題は解決しないし、自分が幸せになることもないでしょう。
つねに自分のできることはなにかないかを探り、小さなことでも、できることを実践していけば、その蓄積によって道が開けてくることもあると思いますし、結果的に自分の幸福につながっていくと思います。
混迷の時代において、とくに何をやったらいいかわからない、どうキャリアを築いていいかわからないという人に、本書をおすすめします。